「仰げば尊し」の歌詞に込められた意図
毎日、猛暑続きですね!静岡では観測史上初めて40℃超を記録。本当に気を付けて過ごして参りましょう。
さてさて、今回のブログのタイトルでもあります「仰げば尊し」という歌は、多くの方がご存知だと思います。卒業シーズンからかけ離れた暑い暑い季節に、何の話か?と思われる方もいると思いますが、
三宅香帆さんの著書「なぜ働いていると本が読めなくなるのか」を読んでいると、この仰げば尊しの歌詞に裏付けられた、時代の思惑があったことを知ったので、ここに記すことにしました。
「仰げば尊し」は、研究者の間でも、長年作者不詳の謎とされてきましたが、米国で出版された楽譜集に、原型となる曲が収録されていることがわかっています。
日本では1884年(明治17年)にはすでに、小学唱歌集(音楽の教科書)に収録されていました。歌詞はもちろん日本人によって作られたのですが、歌詞は以下になります。
あおげばとうとしわが師の恩
教えの庭にもはやいくとせ
思えばいと疾し この年月
今こそわかれめ いざさらば
たがいにむつみし 日ごろの恩
わかるる後にもやよわするな
身をたて名をあげやよはげめよ
今こそわかれめ いざさらば
朝夕なれにしまなびの窓
ほたるのともしび つむ白雪
わするるまぞなき ゆく年月
今こそわかれめ いざさらばよ
懐かしく思う方もいらっしゃると思いますが、注目すべき歌詞はここです。
「身をたて名をあげ やよはげめよ」
何はともあれとにかく「身を立て、名をあげる」こと。
それが「仰げば尊し」の歌詞に込められた、学校を卒業した後の若者像なのです。
幸せになるとか健康でいるとか、そんなことよりもまず、立身出世し、名声を得ることが重要だったんです。
明治時代は、武士の子は武士、町民は町民といった江戸時代の封建制度が無くなり、誰でも自分次第で出世ができる、誰もが野心を持てる時代へと変わりました。
だからこそ、教育のあちらこちらで「立身出世」を促した。それが歌の歌詞まで侵食していったというわけです。
一つの歌詞も、時代や様々な思惑が背景にあるということが知れる、基調な研究文章ですね。
普段の何気に使われているものにも、きっと歴史とその背景があります。興味と関心を持つと、とても面白いものです。