AIは人間をしのぐ?
最近、「AIが人間をしのぐ賢さ」というような新聞記事やネットニュースを見かけるようになりました。
AI技術がこの数年で格段に進化する中、特に一昨年前から生成AIの代表であるチャットGPTが存在感を牽引しています。
チャットGPTにこんな文章を書いてほしいと頼めば、あっという間に仕上げてくれますし、もっと詳細な論文についても、指示を出せば直ぐに作成出来ますから、確かに人間を凌いだ!と言われてもおかしくはありませんね。
しかし、AI研究の第一人者にお話を聞くと、「人間をしのぐ賢さという文章を研究者が見れば、すぐにおかしな文章であることがわかりますよ」と一掃されました。
その理由の一つに、しのいだというのであれば、その対称である人間の認知構造を完全に理解している事が大前提のはず。しかし、人間の認知構造は複雑で、その全貌は数%ほどしか分かっていないそうです。人間は、想像以上に複雑なんですね。
またチャットGPTは、出現確率の高い言葉を予測してつなぐ、といったシステムです。チャットGPTが作り出す文章は、過去のとてつもない文例をサンプルとしてインプットし、この言葉が来れば次はこの言葉だろうと推測し繋げる作業に過ぎません。
例えば、「むかし むかし」という文章があったとします。次に来る言葉は、皆さんも想像がつきそうですね?きっと多くの方が「あるところに」が浮かんだと思います。AIはこのような構造で文章を組み立てているのです。
そして、ここが大きく人間と違う点なのですが、AIには「物語を想像できる力」が全くありません。
むかしむかしあるところにという文書には、時間軸はどれくらい遡るのか、あるところとはどんな所なんだろう?という想像力が人間には働きますが、AIはそれが出来ないのです。
また、これも例えになりますが、ごく標準的な形をした椅子がリビングに置いてあるとします。それを見て椅子だとAIは認知するでしょう。しかし、芸術的でとても個性豊かな形をした真赤な椅子が置いてあると、AIはそれが椅子であることを認識するのは難しくなるようです。
形や色はオーソドックスなものに認識するが、例外的なものについてはクエスチョンになってしまう。これがAIというものです。
AIは、高度な絵を描いたり複雑な音楽を作ったりすることは簡単に出来てしまいますが、自身で生成したものが良いとか美しいといった判断が出来ません。
その判断は人間だけが持つ能力だということを再認識しました。AIが出来ること出来ないこと、人間にしか持つことの出来ない想像する力。
AIに恐れるのではなく、正しい知識を持つことが大事だと感じました。